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他者からの借入額が大きい場合、日本政策金融公庫(国民生活金融公庫)からの借り入れは原則できません。
これは日本政策金融公庫の内規である民業圧迫を避ける為です(公庫から引っ張ったお金でサラ金などの民間金融機関に返済すると、結果的に政府系金融機関である公庫が民間金融機関の商売を邪魔することになるからです)。
また、既にある借入額が大きい場合、公庫へきちんと返済できるかも疑問ですし、金利の高い借り入れをそこまで膨れ上がらせたことに対する人物評価もマイナスに働きます。
しかし今回のケースではなんと借金まみれだったのに、公庫からの300万円の融資に成功しました。一体なぜでしょうか?
過払い金とは、一言で言うとサラ金に払い過ぎた利息です。払い過ぎた利息は返ってきます。もう少し具体的に説明しますと、これまでは利息に関する法律が2つ混在していました。
1つは利息制限法で、上限金利は年20%までと定められています。
もう1つは出資法で、上限金利は29.2%と定められていました。
上記2つの利息に関する法律があったわけですが、多くの業者は当然金利の高い29.2%で貸し付けていました。
しかし2006年の最高裁判決でこの差額分は無効となり、利息制限法の上限金利20%を超えて払った金利は「過払い金」として適切に請求すれば確実に返ってくるお金となったのです。
(100万円以上の場合の上限金利は15%ですので、大きい金額を借りていた場合、返ってくる過払い金も大きくなります)
かつての高金利で100万円以上のお金を、しかも長期間返済をしている方は高い確率で過払い金が発生している可能性があります。
100万円程度返ってくる方は珍しくなく、今回のAさんはなんと300万円近くの過払い金が戻ってきました。
Aさんは元々事業を長らく続けられており、その事業或いは生活がなかなか思うようにいかなかったことから、消費者金融で借入を始めてしまいました。
今回日本政策金融公庫の存在を知ったことから、公庫からの借入相談をされました。
その際にヒアリングすると多額の借金がありこのまま普通に申請しても融資は拒否されるので、まずは弁護士に相談の上、借金の整理をするよう勧めた所、借金がゼロになるどころか、300万円近くのお金が返ってきたのです。
借金自体は整理され、且つ、事業用の融資が必要とのことだったので、日本政策金融公庫の事業融資にチャレンジしようということになりました。
これは私も意外でしたが、公庫担当者の英断に感謝する思いです。やはり優秀な職員が多い日本政策金融公庫はさすが出ると思いました。
過払い金はそもそも返済する必要のないお金です。今回結果的に300万円近く戻ってきましたが、それがなければ、実質300万円コツコツ貯めていたことと同義なのです。
本来日本政策金融公庫では、一度に入ってきた多額のお金は自己資金としてはみられず、どこから引っ張ってきたかもわからない「見せ金」として評価されます。
しかし今回は明確にどの期間、いくら支払ってきたという確かな証拠があります。
10年間コツコツ返済したきた違法な金利がたまたま過払い金請求をしたことで一度に返ってきただけの話で、10年間コツコツ自己資金を貯めたことと実質的には何も変わらない!だから自己資金として認めるとのことなのです。
こうした本来は融資を断られても当然の状況が、過払い金のおかげで逆に大きな逆転劇へと繋がりました。
300万円の自己資金を認められた結果、適切な事業計画を示すことが出来れば同額300万円程度の融資を引き出すことは難しいことではありません。
結果として過払い金300万円と公庫から新規に借り入れした年利2%台の融資300万円の600万円が手元に入ってきたことになります。
普通であれば高い金利で消費者金融から借入したこと自体、批難を受けることもあるのですが、今回はむしろ「長期間真面目に遅れることもなく返済した(金利だけの返済の時もありましたが)事実」も評価されました。
これだけ真面目に返済を続けてきた人だから、きっと公庫の借入に関しても真摯に返済をしてくれるはずだ、、、ということですね。
このような言い方をすると語弊があるというか、誤解されることもあるのですが・・・
今回のケースのように、過払い金請求をすると、たとえそれが正当な権利であっても、民間金融会社の間では当初の約束を破ったということでブラックリストに載せられます。
要は、29.2%の金利に同意した上で借りたくせに、過払い金請求や任意整理で借金減額とかしやがって!ということで、業者としては面白くないでしょう。
また、業界の他社も「こう言う人とは取り引きしたくない」ということでブラックの履歴がある方にはお金を貸すことに一気に躊躇します。
しかし民営化されたとは言え、実質的政府系金融機関である日本政策金融公庫においてはそのようなことはないということです。
もちろん、現状借金まみれで返済原資も保証人もいないような正真正銘のブラックであれば公庫だって貸すはずもありませんが、今回のケースのようにブラックと言っても様々です。
正当な権利として過払い金請求や任意整理をしており、実際は業者側の都合でブラックリストに載っただけの方や過去に金融事故があったけども現在は生活や事業、借入状況を立て直している方は、同じブラックであっても実質が異なります。
民間の金融業者と違って、実質をしっかりと見た上で貸すべきは貸す、貸さないべきは貸さないと門前払いではなく、状況精査と判断をしてくれるのが日本政策金融公庫です。
もしかしたらこのページをお読みになられている方の中にも現在借金で苦しんでいる方もいらっしゃるかもしれません。
そしてそのために金利の安い日本政策金融公庫で借りようと安易に考えている方もいらっしゃるかもしれません。
しかし日本政策金融公庫はそもそも事業用融資しかしません。一部教育ローンは取り扱っていますが、生活の為の融資はしてくれませんので、借金で悩んでいる方はまずは根本的な問題である借金それ自体を解決することが先決です。
その上で事業資金が必要なのであれば、今回の例ではないですが、借金をきれいにした上で堂々と事業融資の申請に臨めば良いのです。
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